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季節の変わり目に御注意
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いつものように朝御飯を作っていると、背後から足音が聞こえてくる。
大樹のお目覚めの時間だ。
振り返るとそこには、虚ろな目をした大樹が呆然と立ち尽くしていた。
「おはよう……って、どうしたの!?」
「何か、頭痛い……ふらふらする。」
明らかに様子がおかしくて声もおかしくて、触れた頬は異様に熱い。
「大丈夫!? 取り敢えず、横になっていて!! 体温計と冷えピタ持っていくから。」
「悪い。それから……琴に移ったら大変だから、リビングのベッドに移動してやって……」
そう言いかけた途端に足元を崩してしまい、床に倒れてしまう。
「ちょ……大樹!!」
横たわった大樹の肩を揺さぶりながら、何度も呼びかけるけれど返事がない。
大変だ…!! どうしよう、どうしよう……。
取り敢えずベッドに運ばないと……。
そう思い立って、大きな大樹の身体から延びる長い腕を、自分の肩へと回す。
それに気付いたのか私に覆いかぶさっていた身体に、力が込められるのを感じた。
「ごめん、大丈夫だから……。」
「大樹、歩ける?」
「うん……。」
本当は前に大樹が私にやってくれたように、お姫様抱っこでベッドまで運んであげられたらって。
けれども非力な私には到底不可能で、肩を貸してあげるのが精一杯。
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