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「……そう?」
「……ちくわぶも少ない。」
「あのな、紗智は赤ちゃんの分と、2人分食べなきゃいけないの……ね、紗智?」
「……。」
大樹も同じような話を振ってくるけれど、今度は熱々の豆腐を口に含んでいた私は、またもスルーを敢行した。
「ええっ、俺まで無視!?」
「ははっ、所詮お前なんて、赤ちゃんが生まれたら邪険に扱われるんだせー?」
「……。」
明らかにテンションの下がる大樹。
その反応に雅人さんは大満足している様子。
ふたりの子供染みた口喧嘩を、私はまるで人事のように聞き流していた。
いつまで経っても子供みたいで……って、そう言っていたお義母さんの言葉が、まさに当てはまるような光景。
兄弟というよりは、昔からの友達みたいな2人だな。
そんなことを思っていると、お腹の辺りに衝撃が走った。
それは初めての……
「どうした?」
思わず箸を置いて、お腹の辺りに手を翳す私を見て、大樹は心配そうな顔をする。
けれども私の心は、驚きと喜びで満ちていた。
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