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「……ははっ、嫌なこというねえ、大樹君は。僕は仮にも君のお兄さんだよ?」
「……。」
あ、図星だ。
大樹君とか僕とか、普段使わないような言葉を連呼しているのが、動揺を隠し切れていない。
けれども大樹は、それ以上何も言わずに雅人さんを見送った。
雅人さんが帰った後の部屋は、少し静かだった。
大樹が手際よく運んできてくれた洗い物を、水で流して洗浄器にセットする。
「これで最後。」
「ありがとう。」
運んできてくれた全ての皿を漸く流し終えると、その瞬間、後ろからぎゅっと温かいものに包まれた。
その正体は確認しなくてもわかっている。
振り向くことすら許してくれない、大樹の甘い抱擁。
「どうしたの?」
「雅兄の言っていたこと、本当?」
「……?」
雅人さん、何か言っていたっけ……?
記憶をたどってみても、思い当たる言葉が見つからない。
首を傾げていると、それに気付いた大樹は付け加えて言った。
「赤ちゃんが生まれたら、邪険にされるの?」
「えっ……。」
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