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そう言いながら彼女の頬に触れると、その温もりが指を伝わってくる。
「……大樹が、ずっと待ってくれているって信じていた。だから……頑張れたんだよ。」
「……。」
やばい……。
潤んだ瞳で、その台詞は可愛すぎる……。
今すぐにでも、力一杯に抱きしめてやりたいんだけど。
そんな欲望を抑えるために気持ちを落ち着かせていると、後ろから先生が現れた。
布に包まれた小さな命を抱えて。
「元気で可愛い女の子ですよ、お父さん。」
初めて呼ばれた「お父さん」は少し恥ずかしかったけれど。
初めて抱きしめた俺たちの赤ちゃんは信じられないくらいに愛しかった。
「……名前、考えなきゃね。」
「うん……。」
紗智の言葉に、俺は小さく頷く。
生まれたての小さな命を壊れないように大切に抱きしめながら。
昨日から続いた不運な出来事も、全て吹き飛ばしてしまうほどの幸せ。
これ以上の幸せ、この世に存在するのかってくらい。
けれども俺の幸せはいつだって、紗智がいないと成り立たない。
だから紗智がいれば昨日よりも今日よりも、明日はもっと幸せに感じられる。
不安や迷いはない。
だって俺は紗智のこと、これからも変わらずに愛し続けるのだから。
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