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クレープ屋に向かう道中、あたしを誘ったとうの本人である有栖(ありす)はクレープのことしか頭にないのか何度かはぐれかけた(というか有栖が突っ走っていってしまった)ということが何度か起き、あたしはやや疲れ気味だ
「はぁ、もう少し周りをみて…あれ?」
ほんの数秒目を離した隙に有栖を見失った
え、マジか。この辺土地勘0なのに
有栖を見失わないように集中するあまり道順など全く覚えていない
改めて周りを確認すると、やはり知らない場所だった
この年で迷子とか正直泣きたい
「はぁ、嘘だろ…」
とりあえず有栖に連絡をとろうと携帯を取り出す
世間がスマホ利用者で溢れている中、ピンクのスライド式携帯をシュッと伸ばして起動させる
待ち受け画面を確認するとなにかが足りない
よく画面を観察してみると小さな変化が起こっていることに気づいた
なにこれっ…!
いつもは左上に表示されている電波のマークがない
電話をかけてみるが呼び出し音どころか通話ボタンを押したところで変化すら起きない
携帯から顔を上げてもう一度辺りを見回すとまた異変が起きていた
さっきは有栖を見失いそうになるほどの人混みの中にいた
それなのにいまあたしの周りどころか視界の中に人っ子1人確認できない
一体なにが起きたんだ…
「だ、誰かいるはずだよね。そんな人が全員消えるとか有り得ないしさ!」
近くの建物をひたすら人がいないか確認する
いない、ここもいない
これで何件目だよ…マジで人いないし…
めっちゃ不安だし。さっきまで有栖と楽しく話してたのに…なんで…こんなことに
異変に気づいた場所からどれだけ遠くにきたのだろうか
「マジで誰もいない…なん、っで…」
視界が涙で霞む。いつの間にか夜になり辺りは暗くなっている。暗闇がさらに不安を煽った
そのとき、なにかの匂いが鼻をくすぐった
「コーヒー…?」
力の抜けた体に鞭をうち、その匂いの方へ全力で駆け出した
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