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地球統一連合極東支部新旗艦「イザナギ」。
確かそんな名前だったはずだ。
まだ披露式典も行ってない最新鋭の戦艦である。
「ビーム兵器……
実用までこじつけてたのか」
軍の技術力も馬鹿にしたものではないと思う。
大方アイゼン・インダストリー本社では研究がかなり進んでいたのだろう。
うちは辺境だし、主任以外はやる気があまりないので、情報が遅い。
とにかくそんな大物が出てきたということは、軍も今回の事態を相当重く見ているようだ。
当たり前といえば当たり前だが。
それにしても、動きが早すぎる気がする……
戦艦に気を取られていると、通信が入る。
「こちらは地球統一連合極東支部旗艦イザナギ艦長、グレイ・フラッグだ。
そこの機体のパイロット。
所属と名前を言ってもらえるか」
声が若いな、と思う。
最新鋭艦の艦長の割には。
「アイゼン・インダストリー第六極東支部テストパイロット。
ハルト・クライフです」
「では、その機体は?
軍のデータに登録されていないようだが……
そちらの試作機か?」
「それは……」
本当のことを言っていいものか……
言い淀んでしまう。
「ああ、その通りだよ」
突然、通信に割り込まれる。
主任だ。
「うちで秘密裏に開発していたとっておきさ」
「失礼だが、あなたは?」
「そいつの上司だよ。
とりあえず帰還させても大丈夫だろ?
戦闘後で疲れてんだろうからな」
「ええ、それはもちろん。
ですが、その前に……」
「そんなん後にしろよ。
あいつはこの町を救ったヒーローなんだからよ。
軍の人間にはいたわりの気持ちってもんがないのかい?」
「……わかりました。
翌日、伺います。
テストパイロットの、ハルト・クライフといったか?」
突然話がこちらに振られる。
「はい」
「よくやってくれた。
我々は……いや、私は君に敬意を表する。
ありがとう」
そう言ったのを最後に通信が切れる。
緊張が一気に解けた。
「まあ、とりあえず工場に機体を入れてくれ。
話はそれからだ」
主任からの通信も切れる。
一つ深呼吸をする。
これからさらに大変なことが起こるのだろうと、そう直感が俺に伝えていた。
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