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外に出ると、日は沈み月が出ていた。
満月である。
空にかかる月をそこはかとなく愛でながら、今日の夕飯はどうしようかと考えていた。
異変が起こったのはそんな折りである。
空から白銀の軌跡が降下してくる。
よく目を懲らすと、朧気ながら「人型」であることが確認できる。
どんどん軌跡は地上に近づき山の方へ降りていく。
何故か反射的に山に向けて走っていた。
「このあたりか……」
確認するように呟く。
不思議と確信できる。
あの機体はここにあると。
少し先に進むと視界が開ける。
そしてそこに横たわっていた。
白銀の「人型」。
現在アイゼン・インダストリーで造られているものとはフォルムが違う。
過去の資料にもなかったはずだ。
機体に向けて足が進む。
単純に惹かれたのである。
機体の美しいフォルムに。
あるいは機体の放つ魔力に。
突然コクピットが開いた。
青みがかった綺麗な銀色の長い髪を持つ女性の姿が見える。
しかし気を失っているようだ。
起こそうとして肩を揺する。
「……ん」
身じろぎをして動き出したので、パッと手を引く。
うっすらとその目を開け、彼女は言った。
「……あっ、おはようございます」
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