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出血の量から察するに、ピカレスクの思い違いということはないだろう。服には前も後ろも一センチ程度の丸い穴が空いていたし、たしかに弾丸が肉を貫いた痕跡がある。なのに今はもう――無傷。まだ店を出て五分も経っていないだろうに。
「おまえはいったい……」
「御主のパートナーじゃ」
容易く答え、ピカレスクは続ける。
「いやぁー、しかし参った。まさか契約を結んだ直後に咎人と交戦になるとはな。我輩の察知スキルも発揮されぬうちに」
咎人。察知スキル。聞き慣れない単語が口を突くが、生憎、今はもう電波トークに付き合ってやれる余裕はない。
――あの目。赤髪の男の目は間違いなく僕を、僕だけを投影していた。 それはつまり無差別殺人ではなく、なんらかの理由があって僕を狙っていたということだ。そしておそらく現在も。だから早くあいつと、あとはその仲間のアイロニクスから逃げる手立てを――――。
……ちょっと待て。アイロニクス。そうアイロニクス。あいつは僕になんと言った? 問うまでもなく覚えている。こう言ったんだ。
『咎人、見ーつけた』と。
「……おいピカレスク。咎人ってなんだ?」
特に期待していたわけではない。ただとりあえずという軽い気持ちで尋ねたのだ。
「十の悪魔に認められ、その悪魔と合意の下盟約を交わした十の人間。『たった一つ、己の望んだどんな願いも叶えられるチャンス』を掴むため、他の悪魔と共闘する人間を抹殺する咎を背負う覚悟をした者のことじゃ」
やけに重たくてディープな内容が返ってきた。
最後に真実の爆弾を添えて。
「当然、御主も十人の咎人の一人じゃぞ?」
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