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「な、なにを怒っているのじゃ、零?」
なにをだと? このイノセントデビルが!
「おまえはそんな大事なことを、契約前に一言も言わなかったぞ!」
「…………あっ」
忘れてました。てへぺろってか。舌を噛め。咀嚼しろ。
「破棄だ破棄だ。悪いがこんな命懸けの殺し合い、僕は御免被る。そうまでして叶えたい願いもないしな」
「それは困る」
「知るか! そもそもあんなパンパン拳銃撃ちまくるやつに勝てるわけがない。物的戦力差がありすぎる」
「撃ちまくるというのは、裏を返せば撃ちまくらなければ当たらないということじゃ」
「肩をぶち抜かれたのはどこのどいつだ?」
「〝肩しかぶち抜かれなかった〟。一流は一発で一頭を仕留める」
「こっちは三流ですらないんだよ。おまえもこの状況で役に立つ特技なんてどうせ持ち合わせていないだろ」
「チェスが強い」
「頭も状況も詰んでやがる」
悪魔と人間でペアを組んで行う殺し合い。仮にそんな、いかにも安いフィクションで取り上げられそうな催しが実在するとして。ほとんど騙されて巻き込まれたようなものである僕がこの窮地、命を張って打開するだけの価値などどこにある?
――いや、ない。
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