狂喜のピストルとイノセントデビル

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「そりゃ大変」  そんなことより今日も空が綺麗だ。そういえば、『空』ってあのどこまでも続くような水色を言うのだろうか? それともあの入道雲を含めて『空』なのか? 後者なら『空』ってやつはホントになんともいろんな意味で大きいやつだ。 「そうじゃろうそうじゃろう」 「えっ? なにが?」  言って、思い出す。そうだ。僕は只今電波トークに付き合ってるんだった。案の定、ピカレスクは怒っている。うるさい。鬱陶しい。宥(なだ)めないと。 「悪かった。おまえの言ってること、信じるよ」  口にするまでもなく真っ赤な嘘だけど。 「本当か!?」  でもそんな嘘が物事を上手いこと円滑に運ぶこともあるんだよ、今みたいに。師匠の言葉を借りるなら、『ペテンは真偽を問わず友愛の第一歩』。 「ああ。それでどうしたら、僕はその“救世主”になれるんだ?」  少しは興味のあるフリをして質問の一つでもしてやらないと、いつ帰してくれるかもわからない。 「簡単じゃ。我輩と『メメント・モリの契約』を交わせばいい」  ……回りくどい。 「具体的には?」 「互いに今一度名乗り合い、手を握り合う。そして声を合わせて言うのじゃ。『我ら、九つの咎を背負い、一つの真実を胸に十の救いをもたらすべく立ち上がる救世主なり』とな」
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