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「これで我らは一心同体。死ぬときは一緒じゃ」
是非御免被ろう。
「んじゃ、契約も済んだことだし、今度こそ僕はいく」
立ち上がり、向けられている視線には気づかぬフリをして、僕は数奇な出会いに心の中でピリオドを打つ。
(……【道連れの死は最悪だ】)
声にする価値もない『定義』をしつつ。
――それにしても、こんな朝っぱらから暴走族でもいるのだろうか? 店の外では誇らしげにバイクのエンジンをブンブン吹かす音がしていた。うるさい。
きっと今日は厄日だ。そのこともあのことも含めて。認めてしまったら終わりだと思って素知らぬ態度でいたんだけど……はぁ。
なんにせよ、これからはなるべく自称ピカレスクとは接点を絶つように動くとしよう。面倒な女なんてあいつ一人で十分だ。
「っと」
などと後ろ向きな思考に没頭しながら歩いていると、客の一人と肩をぶつけてしまい、そこでようやく僕は現実に帰還する。
「申し訳ない」
相手はどこぞのガードマンよろしく黒いスーツを着こなした男だった。浮かんだ直喩は、男の体格を咄嗟に加味して。同色のシルクハットの下から覗く縮れたブロンドの髪。白くてごつごつした輪郭のはっきりしている顔に爛々と君臨している翡翠の瞳が、こちらをギョロリと見下ろしていた。
どう見てもバリバリの外人さんだった。
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