漂流

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あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。 考え事ができてるところ奇跡的に生きてるみたいだ。 死んでないみたいだ、の方が正しい表現かな? 運が良かった。 岩礁のあるところに投げ出されたくせによく生きてる。 っていうか何なんだよ、いきなりこの展開。 俺は普通の大学一年生だってーの。 アニメじゃないんだからいきなり非現実的なことにあうわけでもないはずなのに…。 何、このありえない状況。 (はぁ…) まあいいや。 にしても… OBS行ってアウトドアのこと習ってきたくせにいざという時は全然ダメだな。 所詮自然には敵わない、ってか。 まあ唐突だったから無理もないか。 俺はゆっくり目を開けた。 木々が生い茂り、葉の擦れる音が聞こえて何とも心地好い。 避暑地としては最高だな。 また目を閉じ、自然の音に耳を傾けた。 不思議と、今は不安な気持ちがなかった。 俺は自然が好きだ。 綺麗だし、恵みもあるし、悪いことがない。 海みたいに牙を剥くこともあるが……… 「……あれ?」 何か違和感を覚えた。 牙を剥かれたのは船が操縦ミスしたから? いやいや、そんなことはどうでもいい。 「………なんで…」 目を開け、ガバッと起き上がる。 「なんで俺、森の中にいるんだ…?」 生きてるってことは打ち上げられたってことだよな? こんな森の中まで? いやいや、ありえないだろ。 打ち上げられたなら海岸にいるはずじゃあ…。 確かめないと。 その場に立ち上がり、一歩右足を踏み出す。 途端、 「いったぁ…!!」 激痛が走ってまたその場に倒れた。 「…ったぁ…折れてんのか…?」 だとしたら最悪だ。 こんなとこに医療機関があるわけないから、自然回復でもしたら変な形で治っちまう。 痛かったところを見てみると、ズボンが破れ、肌が青く変色していた。 …うわ、痛そう。 変な方に曲がってはいないから一応は大丈夫かも。 最悪ひびぐらいか。 俺は下手に刺激を与えないようにしながら立ち上がり、足元を見た。 ずっと気になってたんだ。 「他に誰かいる…のかなぁ。」 俺が寝てたところにはまだ若い葉がたくさん敷かれてたんだ。 明らかに誰かがそうしたような。 「他にも漂流した人がいたってことか…?」 疑問に思うことはたくさんある。 とにかく、海岸に行ってみなきゃわかんねえな。
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