漂流

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時計がないとすごく不便だってことに気付いた。 センター試験から毎日のようにずっとお世話になってきた左腕につけている腕時計は見事にぶっ壊れてるし…。 今どれくらいの時間歩いてるんだろう。 確実なのは、もう日が落ちそうということ。 あと…、 「ぅゎぁ…」 俺の体力が尽きそうってことだけだ。 結局あれから飲まず食わず。 崖は見失っちまった。 川はあったけど、そこははるか谷底で。 当たり前に、そこまで降りる気力はなかった。 結局迷って、今はもうどこを歩いてるのかわからない。 結果、現在わりと危機に瀕してます、はい。 「そのまま海岸にいりゃあ良かったかなぁ…」 そしたら誰かと会えたかもしれないのに。 食べ物欲しさに負けたな。 近くに生えていた木の幹に倒れるように寄り掛かった。 右腕に木の枝があたり、折れた感触がする。 少しして、触れてる部分が痒くなり始めた。 「漆(うるし)かよ…ったく。」 漆には痒くなる成分があったっけ。 和らげるには…… ダメだ、頭が働かねーや。 俺は痒いところを掻こうとして左手を動かした瞬間、つっかえ棒がなくなったことでその場に倒れてしまい、動けなかった。 動かしたくても、体は言うことを聞いてくれなかった。 「死ぬ…のかなぁ…」 死への恐怖、みたいなものはなかった。 衰弱しきってるからなのだろうか。 ハハ、なんか言い方が詩人みたいだな。 俺は霞む視界を空に向けたあと、ゆっくりと目を閉じ、 意識はそこで途切れた。
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