常闇の支配者

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一切の穢れを許さない、目が痛い程の白亜の祭壇。 記憶はいつも、そこに還る。 冷厳で、息をする事さえも憚られるような祭壇の周囲には、目深にローブを被った物々しい八人の神官。 懐かしくも恐ろしく、胸が詰まされるように切ない……原初の記憶。 【シビル……いや、セレス。君はまだ……生きたいかい?】 優しい声と共に覚醒を促した手が、氷のように冷たかった。 純白を穢す漆黒の男。 凄絶なまでに美しく、悪魔さえも魅了するような危険な香りを纏った男からは、むせ還るような【死】の匂いがした。 【い……生きたい……】 朧気な意識のまま、辿々しくも本能的に答えれば、彼はフワリと微笑する。 【いい子だね……叶えてあげるよ、その願い。私の大切なセレス……ずっと君に、会いたかった】 甘やかに囁く声音は毒と言うに相応しく、セレスの生を祝福するような言葉が心の深い部分を震わせた。 無機質な紫水晶の瞳に、躊躇いもなく自分の姿を映し出してくれる男。 それ程に喜んでくれたのならば、どうして……。 (どうして……?先生) 「――……客さん、お客さん!起きて下さい!!」 「っ……!?」 耳元で喚かれると同時に容赦なく揺さぶられ、セレスはハッと目を醒ました。
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