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「待ちやがれ……!!」
「待てと言われて待つ馬鹿は居ないでしょう!?何なんですか貴方達は!!」
声を揃えて追い掛けて来る男達に、セレスは訳も解らない逃亡を試みる。
(と言うか何で?ローブで目の色は解らなかったはずなのに……それとも、先バレって奴ですか!?)
ローブの裾をはためかせながら必死に理由を探そうとするセレスだが、そう言った事に疎い彼女には全くもって見当違いな原因しか浮かばない。
「くそっ!止まらねぇとぶっ殺すぞコラ!!」
闇雲に駆け抜けるセレスの後ろから、怒号の混ざった声が距離を詰めて来る。
もしや彼らは、以前はそれなりに訓練された敗残兵か何かだろうか。
そうでなければ、息一つ乱さず脚力を酷使出来るはずがない。
焦りから冷静に周囲を確認する余裕のなかったセレスは、いつしか隣街との間を隔てる【鎮守の森】に足を踏み入れていた。
鬱蒼とした森の中は薄暗く、開拓されていない道はほぼ獣道と言っても過言ではない。
お世辞にも足場が良いとは言えなかったけれど、だからこそセレスの姿を隠すにはうってつけと言えた。
背丈程もある草むらに逃げ込み、奥へ奥へと進んで行く。
ファントムの存在は気掛かりだったけれど、今は追って来る男達の方が遥かに凶悪だった。
「チッ……どこに行きやがったんだ……」
「まだそう遠くへは行ってねぇだろ。手分けして探すぞ」
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