宿命‥

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連れて来られたのは 事務所のスタジオ。 「KIYO‥彼女が 以前話した‥ルイだ。」 オッサンはルイと言う女を 紹介した‥ 「はじめまして‥ルイです。」 「‥KIYOです。」 そのルイと言う女は 以前オッサンが “お前に見てもらいたい 歌手がいる。” と言っていた女だった‥ オッサンは 自分のライブハウスで このルイと出会った。 バンドでは無く ピアノの弾き語りで歌う 彼女の歌声に 何か感じた様だ。 “お前の意見が聞きたい。” と言われていた。 しかし‥ ルイと言う名前からは かけ離れた身なりだな‥ 人の事は言えないが‥ 幸薄そうな‥ 貧相な‥ そんな言葉がはまる女だった‥ 俺も‥オッサンに拾われた時はこんなだった‥ 「とりあえず‥ ルイの歌を聞いてくれ。」 オッサンはルイを促した。 ルイは緊張しながら ピアノに向かった。 俺はオッサンの横に座った。 ルイは両手を自分の息で温め ひとつ大きな深呼吸をすると‥ 鍵盤に指を置き 歌い出した。 空気が‥変わった。 そんな気がした。 さっきまでの‥ 幸薄そうな‥ 貧相な‥ そんなイメージは 払拭された。 何じゃこりゃ‥? コイツ‥何者? 俺はルイの声に‥ 何かわからないが 心をくすぐられている様な‥ ツツかれてる様な‥ そんな気分だった。 「KIYO‥いけそうか?」 オッサンがボソッと聞いた。 「‥んん。 テメー‥ とんでもないモン拾ったな‥」 俺は‥ 独り言の様に呟いていた。 心の声をそのまま‥ 音にしていた。 「とんでもないモンに 言われたくないけどな‥」 オッサンは ホッとした様に笑った。 これが‥ 後に日本の歌姫と呼ばれる ルイとの出逢いだった‥ そして俺は‥ この歌姫を プロデュースする事になる。 そこには‥ 様々な出来事が‥ 待ち受けていた。 今覚えば‥ オッサンとルイが 出逢ったのは‥ 宿命だった。 オッサンは 本当に とんでもないないモンを 拾った‥ 自分の娘を‥。
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