宿命‥

23/33
前へ
/415ページ
次へ
「シン‥?ど~したの‥?」 「あ‥いや‥別に‥」 一瞬で喉がカラカラになった。 俺の水分‥どこ行ったんだ? 声がかすれて‥ 喉がへばりつく様で‥ 息もしにくい‥ 「ゴメン‥ちょっとトイレ‥」 立ち上がると‥ クラクラした‥ 心臓がバクバクし過ぎて‥ ガクガク震えてるんじゃ ないだろうか‥? 何とか 公衆トイレまで やって来た‥ 落ち着け‥ 落ち着け‥ 俺はまだ冷たい トイレの水で顔を洗った。 ホントは頭から冷たい水を かぶりたい気分だった。 満島の母親が‥ けしからん人妻‥ サツキってだけの事だ‥ 父親が‥ けしからん男‥ アレックスとは‥ 決まったワケじゃない‥ 「シン‥大丈夫‥?」 満島が‥ 男子トイレに入って来て‥ 青い瞳を潤ませて‥ 俺を見ていた‥ 違うっ!!違うっ!! 絶対っ!!違うっ!! 「!!! シン‥?ど~したの‥?」 俺は‥ 濡れた顔のまま‥ 満島をキツく抱き締めていた。 そんな事‥ あるワケ無いっ!! 俺と‥満島が‥ 異母兄妹だなんて‥ あるワケ無いっ!! んな事‥ あってたまるかよっ!!!!! 満島は‥ 何も言わず‥ 俺の背中をポンポンして 俺にキツく 抱き締められていた‥ このまま‥ このまま‥ 満島を連れ去りたい。 ホンモノの誘拐犯に‥ なりたい。 そう思った時‥ ♪♪♪♪♪♪ 満島の携帯‥ 鬼平のテーマソングが流れた。 「‥‥‥ゴメン。出て‥」 俺はムリヤリ体を 引き離した。 「‥はぃ。‥‥‥ぅん。 ‥‥‥ぅぅん。何でも無いよ。‥ぅん。わかった。」 電話の相手は‥ お兄ちゃんだろう。 小学生の頃から‥ イイ男だったと言っていた‥ あのお兄ちゃんなら‥ 納得できる。 お兄ちゃんは‥ 有言実行の男だ‥ 今も‥お兄ちゃんは‥ 満島を守ってみせた。 俺と言う‥ 誘拐犯から‥ 「満島‥ゴメン。 今日は‥帰ろ。送ってく。」 「あ‥ぅん‥。」 帰り道‥ 俺と満島は‥ ひと言も‥口をきかなかった。 それが‥ 一番‥ 自然だった様な気がする。 今の俺には‥ もう‥ 父親の事を‥ 満島には‥ 話せなくなっていた‥。 話せるワケが無い。 父親が‥ 一緒かも知れない。 なんて‥ 言えるワケが無い。
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13794人が本棚に入れています
本棚に追加