試練‥

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“おっ父‥おっ父‥ これが最後だよ‥ おっ父‥よく聞いて‥ おっ母のお腹に やって来たのは‥ 間違いじゃないよ‥ おっ父とおっ母に 会いに来たんだよ。 でもね‥もう帰らなきゃ ダメなんだ‥ おっ父とおっ母なら‥ 乗り越えてくれるって 信じてるから‥ やって来れたんだよ‥” 俺は‥ 真理が花音に言った事を 思い出した。 『意味の無い事なんて‥ この世の中に無い。 何か意味があると思えば 乗り越えられる。 試練と一緒に 乗り越えられる力も 与えてくれている。 そうやって‥強くなる。』 ピーナッツちゃんは‥ 初めから短い命で‥ 俺達の所へ来てくれた。 それにも意味があって‥ それには‥ ピーナッツちゃんを失っても 乗り越えられる 二人じゃないと‥ ピーナッツちゃんは やって来れなかった。 って事か‥ “アイアイサぁ~♪” お前は‥ もう充分生きたんだな? “アイアイサぁ~♪” そうか‥ ピーナッツちゃん‥ 約束する。 きっと‥乗り越えて見せる。 だから‥約束してくれ‥ 必ず‥必ず‥ 帰って来い。 おっ母の腹の中に‥ 帰って来い。 お前が‥ 俺達を信じてくれた様に‥ 俺達は‥ お前を信じて待ってる。 わかったな? “ガッテンダっ♪” 真理が言ってた ピーナッツちゃんの ガッテンダっ♪を‥ 初めて聞いた。 ピーナッツちゃん‥ 最後に‥ 笑ってくれないか? “ウキャ♪ウキャ♪‥ おっ父‥楽しかったよ‥ おっ母をよろしくね‥” ‥ガッテンダっ。 任せろ‥。 “ウキャ♪ウキャ♪ウキャ♪” ピーナッツちゃんは‥ 誰に似たのか解らない 可愛い笑い声で‥ 帰って行った。 「‥‥都築さん?」 女医が心配そうな顔をした。 そりゃそうだ‥ さっきまで怒鳴り散らし‥ 号泣してたかと思ったら‥ 黙り込み‥ 今じゃ 泣きながら笑ってるんだから。 「悪かったな‥ もう‥大丈夫だ。」 「都築さん‥お別れ‥ したんですね‥」 「医者がんな事言って いいのか?非科学的な事‥」 「医者も人間です。 私も‥奥様と同じ経験者です。一人目を流産しています。」 「そうか‥テメぇも‥ 選ばれし強い人間って事だな」 女医は力強く頷いた。 ホントに強そうだ‥ 「で‥ これからの話を聞かせろ。」 「ハイっ。」 俺が今 やらなければならない事‥ それは‥ただ1つ。 ピーナッツちゃんとの 約束を守る事‥ 真理と‥ この試練を乗り越える事だ。
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