試練‥

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女医の話は 実にわかりやすかった。 お腹の中で 眠りについてしまった 赤ちゃんは‥ 体が勝手に赤ちゃんを 押し出そうとする。 子宮を元に 戻そうとするらしい。 何てムゴイ機能だと思った。 しかしそれは‥ 次に妊娠する準備とも 考えられる。 女の体は‥凄い。 そしてその際に 大量に出血する恐れがある。 出血と一緒に 子宮の中が空っぽになれば‥ 手術の必要は無いが 心拍が止まったまま 何もなければ 大量出血を避ける為 手術で子宮内を 空っぽにする‥ 真理の場合‥ 微弱ではあるが 心拍はまだあった。 心拍が止まれば これから 出血するおそれがある。 真理が目覚めたら‥ もう一度確認すると 女医は言った。 しかし‥もう 心拍は確認出来ないだろう。 それは 俺が一番よく知っている。 女医が言う 一番気掛かりな事は‥ 真理がこの事実を どう受け止めるか‥ おっ父と違い おっ母はその腹の中で 赤ちゃんを育てている。 既にカラダの一部になった 赤ちゃんを失う事は‥ 心臓を半分持ってかれるのと 同じだろう。 女医の懸念は‥ 真理が自分を責める事‥ 早期流産は 母体側に原因がある事もあるが殆どは‥受精卵の染色体異常等で赤ちゃんが成長しないのが およそ6割~7割だと言う。 それでも‥ 自分を責めてしまう。 自分の腹の中にいたから‥ わからないでも無い。 俺は‥ 信じるしかない。 真理の力を‥ ピーナッツちゃんの事を‥ 「‥‥KIYO?」 真理の手を 強く握り過ぎたのか‥ 真理が目を覚ました。 「真理‥‥」 俺はキョトンとする真理を ギューーッと 抱き締めた。 「KIYOっ‥‥私‥私‥ どうしよう‥KIYOっ‥」 「真理‥大丈夫。 落ち着け。真理‥」 俺はオロオロうろたえる真理を力強く抱き締めた‥ 「KIYO‥どうしよう‥ もし‥ピーナッツちゃんに‥ 何かあったら‥私‥私‥」 「大丈夫。真理‥ 先生に見てもらおう。」 俺は‥ もう‥ピーナッツちゃんは いない。と‥ 言えなかった。 今‥真理に何を言っても‥ まだ‥何も 受け止められないだろう。 女医は言った。 時間が‥解決する。 と言う事も事実だが‥ 時間だけでは 解決出来ないのも事実だと‥ 母親ひとりでは‥ 時間がいくらあったって‥ 乗り越えられない。 乗り越えるのには‥ 時間と‥ 俺が必要だ。 真理と俺の‥ 奇跡の塊だからな‥。
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