試練‥

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翌日‥ 真理は手術をした。 真理は‥ ずっと泣いていた。 俺の顔を見る度に ずっと謝っていた。 食事も取らず‥ ボーっとしてると思ったら‥ 泣いていた。 俺が抱き締めると‥ ゴメンナサイを 繰り返し泣いた。 俺は‥ 昨日の手術の日も‥ 今日の退院の日も‥ ずっと真理のそばにいた。 ピーナッツちゃんが 旅立ちの日を 俺に合わせてくれた‥ と思った。 何故なら‥ この2日は “Moonscape”の打ち合わせ 制作以外に仕事が無かった。 もし‥ 仕事が入っていたら‥ と思うとゾッとする。 俺はきっと‥ この世界から 足を洗ってたかも知れない。 いや‥ 干されてたかも知れない。 しかし真理は‥ 俺に申し訳無い気持ちが 大き過ぎて‥ 俺がそばにいるのが 余計ツライ事は‥ 見ていてわかった。 女医が懸念した通りだった。 真理は自分を責めていた。 いくら俺が 真理は悪くない。 と言った所で‥ 聞く耳を持ってくれなかった。 言えば言う程 真理は落ちていった。 今‥ ピーナッツちゃんの 話をしても‥ ダメな気がした。 真理は‥ 抜け殻の様だった。 子宮だけじゃなく 色んなモノまで 空っぽになってしまった。 まずは‥ 抜け殻になった真理を 満たさないといけない。 空っぽの心が 少しずつ満たされれば‥ ピーナッツちゃんの言葉も 吸収してくれるだろう。 「ど~?真理? やっぱり家は 落ち着くでしょ~?」 ミポりんは努めて 明るく振る舞ってくれる。 正直ミポりんの存在は 有り難かった。 花音はしばらく ジジイの所で 居候してくれている。 ジジイの家からだと 学校までは距離はあるが ジジイが張り切って 送り迎えをしてくれるので 問題は無かった。 その代わり しばらくミポりんには 残ってもらう事になった。 真理は帰って来るなり いつも座っていた ソファに座り またボーっとしていた。 ミポりんは 何時もの様にテレビをつけた。 「真理っ♪ 何か食べたいのある?」 真理は黙っていた。 「ミポりん。 今日は鍋にしよ♪」 俺が言った時だった‥ 「止めてぇ~~っ!!」 と‥真理が叫んだ‥ 鍋がNGなのかと思ったら‥ 「消してっ!! テレビ消してっ!!」 テレビには‥ 可愛い赤ちゃんが映っていた。 オムツのCMだった‥ 俺はテレビを消し 抜け殻の真理を 抱き締めた。 また‥ ゴメンナサイ‥ と‥言われた。
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