試練‥

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結局‥ 夕食はお鍋だったのだが‥ 真理は殆ど口にしなかった。 俺とミポりんは なるべく普段通り 振る舞った。 テレビの音も無い 俺とミポりんの声だけが 宙にふわふわ 浮いてる様だった。 何故なら‥ 真理が‥ クスリとも笑わず‥ 何も喋らなかったから‥ 俺とミポりんの音は 着地点が無かった。 真理は‥ ひと足先に寝室に入って 俺とミポりんが 取り残された。 「ゴメンナサイね‥殿。」 ミポりんは俺に いちごミルクを入れてくれた。 「止めてくれよ‥ 謝るのはもう‥勘弁してよ‥」 「そうね‥誰も悪くなんて 無いものね‥」 「ぁあ‥。なぁ‥ミポりん‥ 真理‥変な気 起こさねーよな?」 「そうね‥殿、明日から NYだったわね‥」 そう‥ 俺は明日からNYに 行かなければならなかった。 「大丈夫よ‥ 私がそんな事させないわ。 それに‥あの子は そんな事しない。 親より先に行くなんて‥ あの子には出来ないわ。」 「そ~だな‥」 先に行かれた悲しみを 誰よりも知ってる真理が そんな事するワケ無いな‥ 「ミポりん‥ ありがとう。」 「殿‥お礼も‥ もう勘弁してよ」 ミポりんは‥笑った。 「やっぱ‥おっ母は強いな‥ おっ母にはかなわねーよ‥」 俺も‥久しぶりに笑った。 「何言ってんの‥ 殿は立派なおっ父よ‥ 赤ちゃんは空に帰ったけど 殿は今も立派なおっ父よ♪」 そうだ‥ そうだよ‥ ミポりんの言う通りだ。 「ミポりん‥ありがとっ」 俺はまた お礼を言ってしまった。 「俺‥行かなきゃ。 ミポりん‥おやすみ♪」 「ハイ。おやすみなさい♪」 ミポりんはまた‥ 笑ってくれた。 俺は‥ 慌てて真理のいる 寝室に向かった。 少しだけ‥ 真理の心を満たせる気がした‥ このままでは‥ 飛行機には乗れない。 少しでも‥ ほんの少しでも‥ 真理の心に 俺の心を残して行きたかった。 「‥‥真理」 寝室を開けると‥ どこから 引っ張り出してきたのか‥ 真理は‥ ベビー服やベビー用品に 埋もれて泣いていた。 「ゴメンね‥ ゴメンね‥ 産んであげれなくて‥ ゴメンね‥」 真理は‥ ピーナッツちゃんにも ゴメンね‥と 言って泣いていた‥。
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