試練‥

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「真理‥」 俺はベビー服やベビー用品を 押しのけて 真理を抱き締めた。 真理は数日の間に 以前より小さくなった。 抱き締めると 薄っぺらくて‥ ポキッと折れそうなくらい‥ 「KIYO‥ゴメンね‥私‥」 「真理‥もういい。 真理‥もう‥ 二度と謝るな。 俺にも‥ ピーナッツちゃんにもだ。」 真理は‥ただただ 泣いていた。 「真理‥ツライのはわかる。 俺も‥ツライ。 でも‥一番ツライのは‥ ピーナッツちゃんだ。」 「だから‥だから‥それは‥」 「違う。 生まれて来れなかったから ツライんじゃない。 真理が‥自分のせいで 自分を責めてる事が‥ 一番ツライんだ。 大好きなおっ母が‥ 自分のせいで泣いてる。 それが‥一番ツライ。 ピーナッツちゃんは‥ 真理や俺を苦しめる為に やって来たんじゃない。 あの子がやって来た意味を 考えろ。」 「あの子が‥ やって来た‥意味‥」 「そうだ‥ あの子は‥ 俺達を選んで来てくれた。 俺達を‥ おっ父とおっ母にしてくれた。 今も‥俺達はあの子の おっ父とおっ母だ。 その事を忘れるな。 真理‥あの子は‥ ずっと見てる。 おっ母がそんなでど~する?」 「KIYO‥私みたいなのが‥ おっ母で‥いいの‥? 私は‥まだ‥あの子の‥ おっ母で‥いいの‥?」 真理は‥泣きながら すがりつく様に聞いた。 「“私みたい”ゆ~な‥ 言ったろ? 私じゃなきゃダメなんだよ。 あの子のおっ母は‥ 真理じゃなきゃ ダメなんだよ‥」 俺達は‥ あの子に選ばれた‥ 乗り越えられると‥ 信じられた おっ父とおっ母なんだ。 「KIYO‥アリガトウ‥」 久しぶりに‥ ゴメンナサイ以外の言葉を 聞いた気がした‥ 「ん‥。‥いい子。いい子。 いい子はもう寝よ。」 「うん‥。」 俺は真理の頭をナデナデして 真理を包み込んだ。 真理はすぐに眠りについた。 母親のお腹の中にいる 赤ちゃんみたいに‥ 気持ち良さそうな顔をして‥ フフフ‥ これじゃどっちが おっ母かわかんねーな‥ 赤ちゃんみたいなおっ母だ‥ よく泣いて‥叫んで‥ よく眠る‥ あったけぇ~‥ 真理は‥ 空っぽなんかじゃなかった‥ こんなに あったけぇのは‥ 中には‥ いっぱい母性とやらが 詰まってるから。 ピーナッツちゃんが 残してくれた あったけぇモンが いっぱい詰まってた‥。 俺の入る隙‥ ね~じゃん‥。
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