誤解‥

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それからKIYOは‥ 早く帰りたい一心で‥ レコーディングに集中した。 私もその現場を目にしたが‥ あの子供の様な姿は無く‥ 私が初めて会った時の 鋭い目で‥ その集中力は半端なく‥ 誰をも寄せ付けない オーラがあった。 何が気に入らないのか‥ 何が納得出来ないのか‥ KIYOは中々OKを出さない。 早く日本に帰りたいクセに‥ 妥協はしない。 社長が言っていた‥ KIYOの頭の中には 完璧にイメージが出来ている。 スタジオの中は‥ ピリピリとしていた‥ その空気を打ち砕く様に KIYOが休憩の指示を出した。 私の体もやっと緊張が とけたのに‥ 「ルイ。歌ってみろ。」 と‥突然言われた‥ 「ボイトレの成果 見せてみろ。」 「‥‥はぃ。」 その目で言われると‥ 抵抗は出来ない。 私はブースに入り‥ 深呼吸をして‥ アカペラで歌った‥ 以前、KIYOの前で歌った唄‥ スタンダードな‥ 洋楽のラブソング‥ KIYOが目に入らない様に‥ 目を瞑った。 KIYOの事を考えない様に‥ 頭を空っぽにした。 KIYOが目に入ると‥ KIYOの事を考えると‥ 思いが伝わりそうで‥ 怖かった。 サビにさしかかった時‥ 「も~いい。」 と‥言われた‥ 最後まで‥ 歌わせてもらえなかった。 「お前、今晩補習な‥ 清春連れて帰ってろ。」 KIYOはそう言うと スタジオを出て行った‥ KIYO以外の人達は‥ great!とか‥good!とか fine!とか‥ 言ってくれたけど‥ ちっとも嬉しくなかった。 私‥ 何しに来たんだろ‥ 何してんだろ‥ 私は‥ 今にも零れそうな涙を 必死にかみ殺し‥ 清春君のいる部屋に向かった‥ KIYOは‥ 外に出て 電話をしていた‥ 日本は今‥ 朝の5時。 「んん?‥‥してね~よ。 可愛いがってやってるって‥ フフ‥‥んん。 なるべく早く 帰る様にするから‥んん‥ 真理‥愛してる。 ‥ん。じゃあな‥。」 電話を終えたKIYOと‥ 目が合ってしまった。 「何‥? あ‥トイレそこ左な♪ 充電完了~♪」 KIYOはスキップで スタジオに戻った‥ 私は‥ そこを左に曲がり‥ トイレで独り泣いた。 恋って‥ こんなにツライものなの‥? みんな‥ こんな思いしてまで‥ 恋がしたい!とか言ってるの? 信じられない‥。 こんな恋なんて‥ するんじゃなかった‥ KIYOなんて‥ 好きになるんじゃなかった‥
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