誤解‥

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「有り難う御座います‥」 私の前に細長いグラスで オレンジ色のカクテルが 置かれた‥ 社長は小さいグラスに入った 琥珀色の液体を持って‥ 「乾杯‥。」 と言った‥ いったい何の乾杯だろう‥ 私は黙ってグラスを 合わせた‥ 見た目通り オレンジの味がした‥ あまりアルコールは 入っていない様だ‥ 「どう‥?飲めそう?」 「はぃ‥ ジュースみたいです‥」 「フフっ‥言ってくれるね‥」 社長は笑いながら 琥珀色の液体を口にした‥ KIYOの瞳を思い出す‥ 綺麗な琥珀色‥ 「‥好きに なっちゃった‥か?」 社長は横目で 笑みをこぼしながら言った‥ 「何ですかっ‥それっ‥ 好きになんか‥なるわけ‥ ないじゃないですかっ‥ 奥さんもいるのにっ‥」 私はジュースみたいなお酒を グビグビ飲んだ‥ 「‥そのカクテルの事 だったんだけども‥」 「エッ‥!?」 やられた‥ KIYOの事を見透かされたのかと思ってしまった。 「両方。好きみたいだな‥」 社長は‥カクテルのおかわりを注文してくれた‥ 「だから‥違うって 言ってるじゃないですかっ! 社長‥仕事の話って‥ 何ですか?仕事の話って?」 私の顔は火を噴いていたが それはアルコールのせい‥ と言う事で‥ 話をそらした。 「ぁあ‥仕事の話ね‥ それが 仕事の話なんだけども‥」 「ハィ‥?」 「KIYOの事。 好きになっちゃったんだろ? それが仕事の話だ。」 意味がわからない。 いつもこの人の言い出す事は 意味がわからない。 あの時もそうだった。 私が初めて ライブハウスの面接に 行った時‥ 私は元々従業員募集を見て 面接に行った‥ 少しでも父親に接近する為に‥ そもそも ミュージシャン希望なんかじゃなかった。 私が和美さんに 面接をしてもらっていると‥ 突然この人が現れた。 まさか‥いきなり会えるとは 思っていなくて‥ 初めて生で見た父親は‥ なかなか‥イイ男だな‥ と‥客観的に見ていた 自分がいた。 感動とか‥そんなモノは‥ 無かった。 私の面接の様子を 黙って見つめ‥ いきなり‥ 「歌ってみて‥」 と‥言われた。 そう‥ この人は‥ 意味がわからない。 仮にも‥ 親子だと言うのに‥ 何を考えてるか‥ 全くわからない。 DNAや‥血なんて‥ こんなモノかも知れない。
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