真実‥

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次の日‥ 私は夜逃げの様に 荷物をまとめ 引っ越す事になった。 元々荷物は殆ど無く‥ 事務所の人に驚かれた。 私ぐらいの女子なら もっと色々とあるのだろう‥ 私は母さんからの手紙が入ったお菓子の箱だけは 自分で持って運んだ。 昨日‥ 久しぶりに 読み返してみた。 いつも‥ふと‥ 読み返しては思う事‥ それは‥ 私は‥ 母さんの命に代えてでも 生まれた価値が あるのだろうか‥ 母さんが望む様な‥ 母さんが手紙に 書いてる様な事を‥ 私は殆ど出来ていない‥ お友達も たくさん出来なかったし‥ 彼氏も出来なかったし‥ 誰かと喧嘩をする事も なかったし‥ みんなといるより 独りでいる事が好きだった‥ そんな私を見かねて お祖母ちゃんが教えてくれた ピアノだけが 唯一の趣味だった‥ 暇さえあれば ピアノを弾いていた‥ ある日‥ お祖母ちゃんは私を 教会へ連れて行ってくれた。 そこで‥ みんなと歌った‥ 日頃あまり喋らない私が 楽しそうに歌っているのを見てお祖母ちゃんは 毎週日曜日に私を教会へ 連れて行ってくれた‥ それが私と歌の 出会いだった‥ しかし‥ それだけで‥ 私の内気な性格には 変化は無く‥ いつしか教会にも 通わなくなり‥ 誰もいない畑で‥ 山に向かって時々 独りで歌を歌っていた‥ それだけで‥ スッとしたから‥ こんな私が‥ 誰かと共同生活なんて‥ 出来るのだろうか‥ しかも‥ 私の好きな人の奥さんと‥ 真理さんは‥ 独りより‥ 一人でも多い方がイイ。と 言った‥ 私は‥ 独りの方がイイ。 全く正反対だと思った。 今更ながら‥ 事の重大さに怯え‥ 不安が胸を押し寄せてきた。 “そのままでいい。 ありのままの 自分でいなさい。” 社長の言葉を思い出した。 社長は‥ 私が娘だと解っても‥ 同じ事を言うのだろうか‥ 共同生活を‥ 勧めるのだろうか‥ 私を‥ 金のタマゴ。として‥ デビューさせるのだろうか‥ 私は‥ 既に色んな感情を胸に キャッスルの扉を開けた。 お菓子の箱を 抱き締めて‥。
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