武器‥

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「‥違う。もう一回。」 もう何回目だろう‥ こうして止められるのは‥ 「ルイ。ちょっと来い。」 とうとうキレられるかな‥ 昨日‥ 1日でマスターしろって 言われてたのに‥ これじゃ全然ダメだ‥ KIYOの様には歌えない‥ 私はブースを出て KIYOの前に突っ立った。 すると‥ みんなが気をきかせて 出て行った。 やっぱり‥ KIYOがキレるの みんな解ってるんだ‥ 「座れ‥」 私はKIYOの言う通り コロコロのついた KIYOと同じ でかい椅子に座った。 椅子にはまだ 生暖かい温もりが残っていた‥ それくらい長い時間 私はみんなに 迷惑をかけたんだ‥と 実感出来る温度だった。 「お前‥何を考えてる?」 KIYOの声と視線に ドキッとした‥ 「‥‥‥。」 そう言われると‥困る。 とにかく‥間違えない様に‥ 注意された事を意識して‥ とにかく‥一回でも 最後まで歌える様に‥ 必死で‥ 「わかった。」 何が‥わかったんだろう‥ KIYOは髪をかき上げて 一時停止すると‥ 「今日はもういい。」 「え‥。」 もういい‥って‥ そんな‥強制終了って事‥? それでなくても 時間が無いってみんな 焦ってるのに‥ 私のせいで‥ 私は情けなくて‥ 申し訳なくて‥ 悔しくて‥泣けてきた。 「ルイ。上手く歌おうとか‥ 完璧に歌おうとか‥ そんな事‥考えんな‥ コレは‥お前の歌だ。 俺のデモ通りに歌うな。 1日でマスターしろと 言ったが‥ 言い方が悪かったな‥ 俺が言いたかったのは‥ 1日で自分のモノにしろ。 って事だ。 俺が生んだが‥ 育てるのはお前だ。 もう1日やる。 自分のモンにして来い。」 そう言うとKIYOは‥ 私の頭の上に手を置いて 出て行った。 私の頭の上には‥ かっぱのお皿みたいに ハンカチが乗っていた‥ そのハンカチは‥ さっきKIYOが くしゃみをした時に 鼻を拭いていたハンカチで‥ でも‥ KIYOのイイ匂いがして‥ また泣けてきた‥。 自分のバカさに‥ 不甲斐なさに‥ やっぱり‥ KIYOが好きな自分に‥ 泣けてきた‥ ど~したって‥ 好きな気持ちは 抑えられない。 どうしたら‥ 気づいてくれるんだろう‥ どうしたら‥ 伝わるんだろう‥ 私は‥ KIYOが生んだ曲の歌詞を‥ 心の中で叫んでいた‥ KIYOは‥ 今の私の感情そのものの曲を‥ プレゼントしてくれていた‥ また涙が止まらなかった‥。
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