武器‥

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どれだけ走っても‥ 心臓は張り裂けては くれなかった。 こんなにダッシュしたのは 何年ぶりだろう‥ 学生時代でも‥ 体育の時間こんなに 真剣に走った事は無い。 さすがに私は 手にした靴を履き ゆっくりと息を整える様に 歩き出した‥ 携帯も‥財布も‥ 持っていない。 ただ‥ポケットに‥ KIYOが頭に乗せてくれた ハンカチだけが入っていた。 もう‥ KIYOの匂いが消えるくらい 私の涙を吸い込んでいる。 私は‥ KIYOのハンカチで 溢れる涙を拭いながら 歩いていた。 これが‥ 私のエンディング? これが‥私のラストシーン? 思いを誰にも告げず‥ 醜態だけをさらして‥ 惨めなラストシーン。 どうして‥あんな事‥ あんな事を してしまったんだろう‥ もう‥あの場所へは 帰れない。 絶対に‥ 知られてはいけなかったのに‥ 真理さんは‥ どう思っただろう‥ 自分の旦那の事が好きな女と‥共同生活していたなんて‥ 私は‥ 真理さんの優しさも‥ あたたかさも‥ 裏切ってしまった。 真理さんが‥ KIYOの奥さんじゃ無かったら‥ もっと違うかたちで 出会えてたら‥ そんな事を思っても‥ 仕方無いのかも知れないけど‥ 私にとって‥真理さんは‥ KIYOの奥さんという割合より‥ 心を許せる優しいお姉さん‥ という割合の方が 大きくなっていた。 それなのに‥ 何であんな事を‥ 自分のした事が‥ 信じられなかった。 ドンっ‥!!!! 「す‥すいませんっ‥」 フラフラして‥ 道行く人と肩がぶつかった。 「あれぇ~~? ルイじゃね‥?」 思わぬ所で 自分の名前を呼ばれ‥ 私は怖ず怖ずと顔を上げた。 「やっぱルイだ‥」 私を呼び捨てにする この人は‥宇野大和。 新進気鋭の若手カメラマン。 真理さんの‥いとこ。 会議室で会って‥ 事務所で何度かすれ違い‥ 話した事は無い。 「こんなトコで 何やってんの‥? ‥‥‥って、野暮だな。」 宇野さんは‥ 私が普通じゃ無い事に 気付いた様だ‥ 誰でも普通じゃないと思うか‥ 「ちょ~ど良かったっ! ちょっと付き合ってよ♪」 え‥?え‥?何?この人? 私は‥ グイグイ引きずられる様に 手を惹かれ‥ 宇野さんに連れて行かれた。
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