血縁‥

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「シン‥いいの‥?」 満島は追い掛けて来る女を 振り返りながら言った‥ 「ゴメン‥ トマト鍋じゃなくて‥ 家にあるので何か作るから‥」 俺は満島が転がしていた カートを そのまま置き去りにして来た‥ 「そ~じゃ無くて‥ シン‥ あの人‥ さっき追っかける途中に 転んで‥ 動けないみたいだよ‥ 泣き崩れてるよ‥」 満島に腕を引っ張られ 振り返ると‥ 人目もはばからず‥ 女は座り込んで ワァワァと声を上げて 泣いていた‥ 女は‥ 俺が最後に見た時の 半分くらいの大きさに見えた‥ 俺が‥ 大きくなったからなのか‥ よく解らないが‥ それほど‥ 小さく見えた‥ 「‥‥オイッ!!満島っ!!」 満島は俺の手を振りほどき 女の所へ走って行った‥ 「大丈夫ですかぁ? 歩けますかぁ?」 満島が声をかけているのに‥ 女はまだ泣きわめいている‥ 野次馬共は 輪になって二人を見ていた‥ クソっ‥‥!!!!! 「何やってんだよっ!! 彼女を巻き込むなっ!!!! いい加減黙れっ!! ‥テメ~らもジロジロ 見てんじゃねーよっ!!!! 見せモンじゃねーんだよっ!!」 俺は満島を女から 引き剥がした‥ 野次馬共が コソコソと言いながら 散って行った‥ 俺の青い目と 目を合わせる事なく‥ 散って行った‥ 「あの‥ 何かございましたか? 他のお客様に‥」 店長らしき人物も‥ 目を合わせる事なく言った‥ 「他のお客様に‥ 迷惑かけて悪かったなっ!! 言っとくけど 俺も立派な客だっ!!」 ポイントカードだって 持ってるっつーんだよっ!! 店長は‥ やっと俺の目を 見たと思ったら‥ ビクーーっと 体を硬直させた‥ 「行くぞっ!!」 俺はしゃがんで 女に背を向けた。 「何やってんだよっ!! これ以上迷惑かけんなっ!」 女は‥ 黙って俺の背中に乗った‥ 満島は‥ 俺と女のカバンを持って‥ ニヘっと笑った‥ こんな時に‥ その笑顔は‥キツイ。 この女に対する 恨み辛みが‥ ど~でもイイ事の様に 思えてしまう。 頼むから‥ 今は‥その笑顔は‥ 勘弁して欲しい‥ 俺の背中にかかった重みは‥ ビックリするくらい‥ 軽かった。 俺が‥ ずっと思い続けた重みは‥ こんなモンじゃないのに‥
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