血縁‥

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「満島‥アリガト‥」 「何がぁ~?」 満島は モコモコマフラーに 白いダッフルコート‥ 白いポンポンのついた ミトンの手袋をして‥ 上を向いた。 お兄ちゃんの忠告通り‥ 門限の1時間前には 家を出た‥ 羽をむしられたくないし‥ ましてや 関節プランプランは御免だ。 「何が‥って‥その‥ 色々と‥」 「色々‥?ぅ~ん‥ よく解んないけど‥ いいよ~♪ お姉ちゃんは‥ お母ちゃん似だねっ♪ シンは‥お父ちゃん似かな?」 あまりにも‥ 無邪気に言うので‥ 「俺‥ 父ちゃん見た事ないから‥ でも‥そ~かもな‥」 と‥今まで 口に出した事の無い “父ちゃん”と言う言葉を サラっと使ってしまった‥ 「私も‥どっちに似てるか 解んない。 両方見た事ないし♪」 お化け‥見た事ないし♪ みたいな言い方だった‥ 「満島は‥ 知りたいと思わない?」 ついつい‥ 踏み込んでしまった‥ 「ん~~~‥ 知りたい様な‥ 知ったらいけない様な‥」 「知ったらいけない‥?」 「ぅん‥。お兄ちゃんが 悲しむ事はしたくない。」 そっか‥ 満島は‥お兄ちゃんの事‥ 痛いくらい解るんだったな‥ 「シンは‥知りたい? 父ちゃんの事‥」 「ん~‥ そりゃ‥昔から 知りたい事だらけだったよ‥ 何で俺だけ 目の色や髪の色が違うのか‥ 疑問だらけだったよ‥ でも‥俺も‥聞けなかった‥」 小さいながらに‥ 母親に気をつかっていたのか‥ いつも家に‥ 父ちゃんじゃない男が いたからなのか‥ 奈由美と同じ父ちゃんじゃ ないからなのか‥ 今になったら その理由は解らないが‥ 俺も‥ 知ったらいけない気が していた。 聞いてはいけない気がした。 「今は‥?今なら‥ 知りたい?」 「‥‥んん。」 満島と出会って‥ 恋と言うのを知って‥ 俺にも些細な夢が出来て‥ 俺にも生きる理由を 与えて貰って‥ 自分が何者なのか‥ 知りたい。 と‥思う様になった。 「教えてねっ♪私にも‥ シンのお父ちゃんの事‥ 教えてねっ♪」 満島は白い息を吐きながら ニヘっと笑った。 「んん‥。」 俺は‥魔法の笑顔のおかげで 自分から‥ 満島の手を握る事が出来た。 しかし‥ 後に俺は‥ やっぱり‥ 知るんじゃ無かった‥ と‥後悔する事になる。 魔法にかかった この時の俺は‥ そんな事‥ 知る由も無かった‥。
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