血縁‥

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真理が俺の電話に出るのは オッサンと野田からの 電話くらいだ。 真理の様子が おかしいのはすぐに解った。 一生懸命‥ 平静を装っていたが‥ 明らかにおかしかった。 わかりやすいヤツだ。 しかし‥ こんなにも早い 展開になるとは‥ 真理と入籍の次の日‥ 二人でデートに 出掛けた墓参り。 真理から 白いバラの話を聞いて‥ 嫌な予感はあった。 一度ならまだしも‥ 頻繁に見かけるとなると 話は別だった。 花音の母親は‥ 病院から逃げ出して‥ その後の消息は不明だった。 ただ‥ 離婚届にはんこを押して それだけが送られて来た。 消息不明。と言うか‥ 誰も探しはしなかった。 父さんも‥俺も‥ あの女を探して連れ戻す事は しなかった。 あの女を探していたのは‥ 借金取りくらいだろう。 元々 得体の知れない女だった。 突然現れて‥ いつの間にか 家に住みついていた様な‥ ゴキブリみたいな女だった。 そして‥ 突然消えた。 もし‥ ゴキブリ女が 俺の目の前に現れたら‥ 俺は何をするかわからない。 怖かった。 だから‥ 真理に‥止めて欲しかった。 花音の為になる事だけを してやりたいのに‥ その自信が無い。 俺だけの感情で‥ 花音を傷つけるのが‥ 何より怖かった。 花音は‥ もう‥ 昔みたいに‥ 子供じゃない。 今の花音には‥ 自分の人生を 選択する権利がある。 それもまた‥ 怖かった。 細い肩を震わせながら 涙を流す真理は‥ まるで‥ 鏡に映った 自分を見ている様だった。 俺は‥ 自分自身を抱き締める様に‥ 真理を抱き締めた。 大丈夫‥ 大丈夫だ‥ 俺は‥ 何があっても‥ 花音のお兄ちゃんで‥ 花音の家族だ。 “お兄ちゃん♪ 血ぃ。繋がったねっ♪” 花音と血を交わした あの日の花音の笑顔が‥ 俺のまぶたの裏に 映し出された。 花音‥ 何があっても‥ 何を知っても‥ お兄ちゃん。って 呼んでくれるか‥? 俺に‥ 笑いかけてくれるか‥? 俺は‥ どす黒い夜の街を 車で走り抜けた。 花音の笑顔を求めて‥
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