血縁‥

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俺はてっきり‥ ゴキブリが現れたのかと 思っていた‥ そして‥ まさか‥オッサンの家に 身内とやらが スタンバイしてるとは 思っていなかった。 柳沢夫妻とやらは‥ どこの馬の骨か 聞くまでも無く‥ その女の顔を見れば‥ すぐに解った。 雰囲気は正反対でも‥ ゴキブリ女と よく似た顔立ちだったから‥ 案の定‥ 妹だった。 “あの子を返して欲しい‥ 私達の娘として‥” キリンみたいな丸い目と 長いまつ毛の銀縁メガネが 言った。 「何の冗談だ‥? ドッキリか? 笑えねーんだよっ!!!!!」 俺はテーブルを足で 蹴っていた‥ 真理が俺の手を ギュッと握った。 「こんなドッキリあるか‥ そもそもお前に妹がいる事が 世間じゃドッキリだろ‥ スイマセン‥ 躾がなってなくて‥」 オッサンは テーブルを正しい位置に 戻しながら言った。 柳沢夫妻は ブルブルと顔を振った。 「都築様がご立腹なのは ごもっともです‥ 都合のいい話をしている事も 承知しております‥」 「なら‥ 話す必要はね~だろ?」 柳沢夫妻は黙ってしまった。 「清雅‥。 お前それでいいのか?」 オッサンに‥ 久しぶりに“清雅”と‥ 名前で呼ばれた‥ 「お前‥ホントはずっと‥ こんな日が来る事を 想像してたんだろ? お前らしくナイっ‥ 逃げるのか?」 「逃げる‥? 逃げてぇ~よっ!!! 一目散にココから 逃げ出してぇ~よっ!!! ずっと‥ 想像しては‥怖くて‥ いつもこの恐怖から 逃げて来たんだよっ!! 悪いかっ!! 俺は‥怖くて しょ~がねぇんだよっ!!!!!」 俺は‥ 真理の手を握ったまま‥ 真理の手ごとブンブン 振りながら言っていた‥ 「スイマセン‥ こ~ゆ~男なんです‥ ただの猛獣じゃありません。 人より繊細な心を持った 猛獣です‥ この猛獣が‥ あの子を育て上げたんです。 コイツに‥ 全てを話してやって下さい‥ 清雅‥いいな‥。」 オッサンは‥ 猛獣使いみたいに言った。 俺は‥ 怒り狂って疲れた猛獣の様に 尻尾を丸め‥ 牙を隠して‥ ジッっと‥ キリンみたいな夫婦の話を 聞いた。 真理の手を握って‥。
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