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ボクがこの家に来てから、一体どれだけの時間が立っただろう。
海に面した崖の上にある、赤い屋根の色をした、一軒の家。周りには一面の草原と、崖の縁にある一つベンチがあるだけ。
ボクは今、そのベンチに座っている。
海のはるか彼方から潮の匂いのする風がふいてきた。それはボクの髪をフワリと揺らすと、後ろのほうへと通りすぎていく。
「ここにいたんだ」
ふと後ろから、そんな声がかかってきた。ボクが振り向くとそこには、見慣れた姿の、『サナギ』が立っていた。白い帽子をやってくる海風に飛ばされないように抑えながら、優しく微笑んでいる。
「やあ、サナギ。君もおいでよ。とっても気持ちいいよ」
ボクはベンチの横の席を開けると、サナギにそう声をかけた。
サナギは笑みをボクにかけると、ボクの横へと腰をおろす。途切れなく吹いてくる海風が彼女の白いワンピースと、その長い髪を揺らした。ボクはそれを横目で見ると、ほっと胸を撫で下ろす。
「ボクはね、サナギさえ居てくれればそれでいいんだよ」
ボクは、隣に座っているサナギにそう声をかけた。
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