二人の家

3/12
前へ
/14ページ
次へ
サナギは、うん、とうなずくと、ボクと同じように海の彼方へと視線を向ける。 サナギとこうしている時間が、ボクは一番好きだ。サナギに悟られないように薄く笑ったボクは、髪に手を当てると、海風に身体を預けるようにして、静かに目を閉じた。 「ホントだ。気持ちいね」 サナギが、そうボクに向かって声をかけてくる。 「うん。ホントに気持ちいよ」 薄い雲が、白みがかった太陽に、ゆっくりと重なった。こうして今日も、時間が過ぎていく。ボクとサナギの、二人だけの時間が。 2 「今日の夜ご飯はビーフシチューだよ」 夜、暖炉の前に座っていたボクに、キッチンから、サナギはそう声をかけた。 「腕によりをかけたからね」 ボクはサナギに微笑みかえす。 「楽しみにしてるよ」 「おいしいよ。サナギ」 ボクは、テーブルの上に並んだビーフシチューを食べながら、サナギにそう言った。 「嬉しいわ」 サナギはそう答えると、頬を赤らめる。こうしてサナギと一緒に話をしていると、本当に時間があっという間に過ぎていく。少しでも、大事にしなくちゃ。ボクは、ビーフシチューの味を噛みしめながら、静かにそう思った。 .
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加