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サナギは、うん、とうなずくと、ボクと同じように海の彼方へと視線を向ける。
サナギとこうしている時間が、ボクは一番好きだ。サナギに悟られないように薄く笑ったボクは、髪に手を当てると、海風に身体を預けるようにして、静かに目を閉じた。
「ホントだ。気持ちいね」
サナギが、そうボクに向かって声をかけてくる。
「うん。ホントに気持ちいよ」
薄い雲が、白みがかった太陽に、ゆっくりと重なった。こうして今日も、時間が過ぎていく。ボクとサナギの、二人だけの時間が。
2
「今日の夜ご飯はビーフシチューだよ」
夜、暖炉の前に座っていたボクに、キッチンから、サナギはそう声をかけた。
「腕によりをかけたからね」
ボクはサナギに微笑みかえす。
「楽しみにしてるよ」
「おいしいよ。サナギ」
ボクは、テーブルの上に並んだビーフシチューを食べながら、サナギにそう言った。
「嬉しいわ」
サナギはそう答えると、頬を赤らめる。こうしてサナギと一緒に話をしていると、本当に時間があっという間に過ぎていく。少しでも、大事にしなくちゃ。ボクは、ビーフシチューの味を噛みしめながら、静かにそう思った。
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