序章―夢か現か―

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 和千日堂の隣、渡り廊下一つ渡った先の洋千日堂には、英国人の血が混じった日本人が一番人気花魁であった。  彼の美しい金糸の髪と甘えるような垂れ目はどこか淫靡で、客達はみな彼の美貌に釘付けになる。  その美貌を活かし、狙った獲物をじわじわと追い詰める様な様子から彼に付けられたあだ名は女郎蜘蛛。  そして、和洋どちらにも所属しない、特別な下男が一人。  彼の名は蓮と言い、体中に花の様な痣があった。そんな彼には蜜蜂と言うあだ名がつけられていたが、どの花魁達にも特別に可愛がられていた。まだ水揚げは済んでいないが、客達との間にその珍しさから今か今かと待たれている。  この四人こそが、千日堂の華であり客達がごぞって通う理由。  そして今日もまた、彼らに会いに、客は沢山の金を握って見世まで歩いてくる。束の間の夢を見に。
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