一章 変革の狼煙

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――同刻、《命の森》南西の獣道 闇夜の森の中、ほんの小さな獣道。 星すらも顔を見せない暗いこの道を、小さな少年が駆けていく。 彼にとってこの森は庭同然であり、全く光源が無い暗闇でも迷うことはない。 それに、隣には相棒もいた。 青空のような美しい鱗を輝かせる、幼い飛竜。 生まれたときから傍にいた、彼にとってかけがえのない友達だった。 と、突然幼竜が動きを止めた。 「クロウ、どうしたの?」 不安げに西の空を見つめている友に、問い掛ける。 「ほら、いくよ!」 クリスはクロウを急かして再び走りだす。 彼…クリス=ラグーンは、寝たきりの母にある花を摘んでこようとしているのだ。 久しく目にしていない、母の笑顔が見たかった。 (早くしないと…) 彼の求めるその花は、夜にしか開かない。 迫る刻限に焦りを感じ、クリスは足を速めた。
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