8人が本棚に入れています
本棚に追加
――同刻、《命の森》南西の獣道
闇夜の森の中、ほんの小さな獣道。
星すらも顔を見せない暗いこの道を、小さな少年が駆けていく。
彼にとってこの森は庭同然であり、全く光源が無い暗闇でも迷うことはない。
それに、隣には相棒もいた。
青空のような美しい鱗を輝かせる、幼い飛竜。
生まれたときから傍にいた、彼にとってかけがえのない友達だった。
と、突然幼竜が動きを止めた。
「クロウ、どうしたの?」
不安げに西の空を見つめている友に、問い掛ける。
「ほら、いくよ!」
クリスはクロウを急かして再び走りだす。
彼…クリス=ラグーンは、寝たきりの母にある花を摘んでこようとしているのだ。
久しく目にしていない、母の笑顔が見たかった。
(早くしないと…)
彼の求めるその花は、夜にしか開かない。
迫る刻限に焦りを感じ、クリスは足を速めた。
最初のコメントを投稿しよう!