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――セウズ王国宮廷
(なにが緊急会議よ…私が行く必要ないじゃない。)
夜にしては明る過ぎる宮廷の廊下を、少女が仏頂面で歩いている。
時間のためか、人とあまりすれ違わない。
それも彼女の癇に障った。
何故自分がこんな時間に呼び出されなければならないのか、分かっているとはいえ腹が立たない訳ではない。
両親が戦場で倒れたあの日、彼女は悲しみと共に怒りを覚えた。
“無敗の騎士王”として大陸中に名を馳せていた父が、母を守ることもできず、高々魔人ごときに討ち取られてしまったのが無性に腹立たしかったのだ。
以来、父を越える誇り高き“騎士王”になることがエミナの目標となった。
が、女王としての業務や会議は退屈そのものでエミナの理想からは程遠い。
彼女はそれらを武術の鍛練の弊害としか見ていなかった。
やがて彼女は目的の部屋に着いた。
召集時間はとっくに過ぎているが、そんな事は気にしない。
木製の重い扉を力いっぱい押し開ける。
彼女…現セウズ王国の女王エミナの到着に既に集まっていた十人の大臣が一斉に起立した。
その雰囲気が少し堅いのは気のせいではないだろう。
「これより、緊急の宮廷議会を開きます!!」
進行役の大臣の声が、妙に大きく聞こえた。
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