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ー♪
ミ、の音だ。
丘陵の岩に腰かけ、少女は歌っていた。
遥かを見渡せる広い草原に、透き通った声が駆っている。
ー♪
少女のやたら息の続くこと、思わず私は足を止めた。
なにか予定があった気もしないでもないが、そんなことはもういい。
ー♪
次は、ファの音。
微かに息を吸って、少女は再び歌い出す。
……「おひめさま」。
彼女はそう歌っていた。
みずぼらしい風体ながら、どこか気品を感じさせてくれる歌声。
少女はきっと、このメロディの中ではおひめさまでいられるのだろう。
なんの因果だろう。私は、もう気づけば彼女に歩み寄っていた。
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