13人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「やあお嬢さん」
彼方に声を響かす、その少女の背後から声をかけた。
ぱたぱたと揺らす、狐よろしき太い尻尾を止め、少女はこちらを振り向いた。
「ん、あなただって子供じゃないですの」
むっとした表情でこちらを睨む。
「綺麗な歌だね」
声をかけるも、少女は未だに敵意を孕んだ眼差しを、私に向けたままだ。
どうやらひどく警戒されているらしい。まぁそれも仕方あるまい。
彼女は見たところ半獣人。縄張り意識は人一倍強いのだろう。
「キミが作ったの?」
私はなんとか彼女と打ち解けようと、続ける。
「えぇ」
のちの閑話休題。
これではまるでお話しにならないじゃないか。
「邪険にしなくてもいいじゃない。
私はあなたとお話したいだけなんだから」
「私はしたくありませんわ」
そっぽを向かれてしまった。
どうあっても、少女はこちらを向いてくれそうにない。
現時点では。
……ならば、いいか。仕方がない。
ー♪
始めは、ミの音か。
少女の頬を、ちらと見る。
薄い褐色の肌が、紅潮していた。好奇の紅か。
私を見る目が、先の刺々しいものでなくなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!