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山の夜は、よく冷える。
紅葉も散り、風が肌を刺す冷酷な季節に入ったようだ。
息吹く横風に身震いをする。
日課である、歌の練習の帰路。
私、ルーファス・ローレンスは、先刻の丘で出会った少女のことを思い出していた。
(きれいだったなあ)
きらびやかなほど光沢のある金髪、端正な顔立ち、可憐な体つき。
何より、あの歌声には衝撃を受けた。
どうしてあの細身から、あのような芯のある声が。
どうしてあの声量が、まったくもって耳障りでないのか。
それは身体中を揺さぶられるような強い衝撃だった。
彼女は、紛うこともない、「お姫さま」だった。
歌姫。私が憧れてやまないそれである。
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