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俺の家はズバリ宿屋を営んでいる
客入りもまずまずで親父もこの村では広く顔を知られた存在だ
各言う俺も“宿屋さん家のどら息子”として村中に悪名を轟かす有名人
知名度なら親父と五分だが、信頼度で言えば雲泥の差
村で俺を見かけたら、警備隊にはにじり寄られ、女の子には逃げられる
あまりにも“残念”な青春を謳歌しているところである
「ん?帰ったのかアダム。今日はいつもより早かったじゃないか」
家の裏口から帰宅した俺に、エプロン姿の親父が笑いながら話し掛けてきた
ガタイの良い長身にスキンヘット…
どこぞの格闘家顔負けな体格にフリルつきのエプロンは、いかに実父であっても目をそらしたい衝動にかられる
強面なくせに人懐っこい笑顔を浮かべながら、親父はやれやれとため息をついた
「いつもどこにいっているのやら」
「さあ?……どこだろうな」
俺はそれだけ言い残し、足早に一階隅にある自室に向かう
後ろから親父が何かいっていたが、正直もうどうでも良い
自室の扉を閉めたあと、手早くエプロンを身に付けて外へ出る
再び親父と顔を会わせ、二言三言言葉を交えてから空き部屋の掃除へ向かった
なんの面白味もなく部屋を掃除していく俺
ふとした拍子に窓を見ると、そこには一本の朽ち木が立っていた
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