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* * *
明里、明里、明里、アカリ…
「…んん~ー……」
ずっと『三輪先生』って呼んでいる所為か、今更名前で呼ぶ事に妙な照れを感じてしまう。
「慶?そこ磨き過ぎじゃね?」
「へ!?」
教室の窓を新聞紙で磨いていると、廊下側にいた英士が窓ガラス越しに僕を覗き込んで苦笑していた。
今日はクリスマスイヴ。
…だけどその前に、終業式。
式も終わって今年最後の大掃除中である。
どうやら僕、他に意識が飛んでいた所為で同じ所しか磨いていなかったらしい。
「それよりさー、慶も行くだろ?放課後」
「う…ん?…何処へ?」
「!?」
キョトンとする僕に、英士がガッと目を見開いて窓を思い切り開け放った。
―ガラッ!
「え!?終業式の時に皆で話したじゃん!『恋人いない奴は放課後カラオケ大会』って!」
「………。」
そうだっけ?
あんまり覚えてないけど…。
ずっと上の空だったしな。
体育館で三輪先生を見つけて眺めてました…とは云えないし。
って云うか皆も校長の話そっちのけだったのか。
ハハハ。
…イヤイヤイヤ、その前に。
「あー…僕、カラオケはちょっと…」
「えぇーッ!?俺、慶とEXILE歌う気満々だったのに!?」
英士が箒を片手に上半身をグルグル回しながら訴えてくる。
「う、うぅー…ん」
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