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* * *
イヴの夜は、三輪先生が予約した、都心にあるフレンチの店で食事して
店の近くのイルミネーションスポットでツリーを眺めて
駅まで彼女を送って帰った。
勿論、楽しかったけど
互いに心に何かが引っ掛かった侭で
特別何かをする訳でもなく
まして次に会う約束もなく
一緒に居たのに、どこか寂しい夜だった。
―ウィ……ン……
マンションに着いて、エレベーターに乗り込む。
上階へ上がる無機質な音だけが、やけに耳に届いていた。
「………。」
いつの間にか日付も越えて、クリスマスイヴは終わったけれど。
…隼人はまだ家には帰っていないだろう。
「………。」
あの部屋で、独りになりたくない。
「………。」
ぼんやりしていると、不意にエレベーターの扉が開いた。
だけど一歩も踏み出せない侭、閉まってしまった。
……何がしたいの、僕。
どうしたいの?……僕。
―………ハァ。
先刻から、堂々巡りだな。
「………、取敢ず」
エレベーターは、出るか。
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