hanker;035

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  ―ウィ……ン… 扉を開くボタンに触れた瞬間に、エレベーターが勝手に下へ下り始める。 「げッ!?」 ちょっと待った!! 咄嗟に"開く"のボタンをカチカチ連打したけど、完全スルーでエントランスに戻ってしまった。 あー…、誰かが呼び出したんだな。 仕方ない、一度降りて… ―ガー…… 「あれっ?慶?」 「へ?」 顔を上げると、再び開かれた扉の前に、真奈が立っていた。 「こんな時間にどうしたの?…あ、自販機行く所?」 「…ううん、降りそびれただけ」 「は?何それ~、ウケる」 呆れた様に笑いながら真奈が乗り込んで来て、自分の家と僕の家の階のボタンを押した。 「………。」 …そう云えば、こうやって真奈と話すのは久々かも。 真奈は学園祭の終わり頃から塾に通い始めたらしくて。 僕等の家に顔を出す時間は、少しずつ減って来ていた。 …まぁ、今日は単に友達と遊んだ帰りなんだろうけど。 「…慶?何かあったの?」 「んー?なんで?」 「いつも以上にボーっとしてるから」 「…………。」 う。 僕、普段そんなにボーっとしてる? 無言で真奈と顔を見合わせたけど、返す気力も無かった。 ―ガー……… やがて真奈の家の階に着いたけど、真奈は僕と顔を見合わせた侭、降りようとしない。 「真奈?降りないの?」 真奈の背後へ視線を移すと、その扉は閉まってしまった。 「路線変更。」 「は?」 呆気に取られる僕を余所に、真奈はニッと笑って、エレベーターの最上階のボタンを押した。  
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