hanker;036

3/6
前へ
/248ページ
次へ
  一緒にいた集団から抜けて掛け寄ると、来るなり少し複雑そうな面持ちで僕を見た。 「慶、何で真奈ちゃんとデートしてんの?浮気したら蓮見に殴られるよ?」 「はい?」 何でそこで蓮見が出て来るの? しかも、"殴られる"? ……あぁ、そっか。もしかして。 大掃除の時に誤解された侭?とか? あ、有り得るな。(汗) …本当にもう、蓮見も英士も。 世話が焼けると云うか。 僕を困らせるって事に関しては、そっくりだ。 「英士、待って。これは……」 ―グイッ!! えぇッ!? 誤解を解く間も無く、英士に胸倉を掴まれた。 「慶、俺が真奈ちゃんの事好きなの知ってるよね?何?まさか俺の気持ち知ってて二人仲良く俺の事笑ってたの?」 「え…違う……」 違うよ。全然違う。 そんな訳無いだろ? いつになく、英士が険しい表情を見せる。 真剣過ぎて目を逸らせずにいると、不意に英士の手の力が抜けた。 「…………、真奈ちゃん」 英士の視線が、スッと移る。 「佐倉君、私と慶は幼馴染みなんだから、一緒に遊ぶ事ぐらい普通にあるよ?」 僕も英士の視線を追うと、真奈が僕を掴んでいた英士の手に自分の手を重ねて、静かに訴えていた。 「それより…、佐倉君。」 「…ん?」 重ねていた手をそっと離しながら、真奈がいつになくどぎまぎした表情で視線を泳がせている。 なんだ? 何か、照れてる? 様子を窺っていると、やがて決意した様に真っ直ぐに英士を見た。 「佐倉君って……私の事好きなの?」 「「は!?」」 わ。しまった。 うっかり僕まで声を上げてしまった。 何を云い出すのかと思えば…!! 照れ隠しなのか俯いてしまった真奈に冷めた視線を送っていると、不意に胸倉にあった手が離された。 「…英士?」 見ると、英士は耳まで真っ赤になって硬直していた。  
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加