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一緒にいた集団から抜けて掛け寄ると、来るなり少し複雑そうな面持ちで僕を見た。
「慶、何で真奈ちゃんとデートしてんの?浮気したら蓮見に殴られるよ?」
「はい?」
何でそこで蓮見が出て来るの?
しかも、"殴られる"?
……あぁ、そっか。もしかして。
大掃除の時に誤解された侭?とか?
あ、有り得るな。(汗)
…本当にもう、蓮見も英士も。
世話が焼けると云うか。
僕を困らせるって事に関しては、そっくりだ。
「英士、待って。これは……」
―グイッ!!
えぇッ!?
誤解を解く間も無く、英士に胸倉を掴まれた。
「慶、俺が真奈ちゃんの事好きなの知ってるよね?何?まさか俺の気持ち知ってて二人仲良く俺の事笑ってたの?」
「え…違う……」
違うよ。全然違う。
そんな訳無いだろ?
いつになく、英士が険しい表情を見せる。
真剣過ぎて目を逸らせずにいると、不意に英士の手の力が抜けた。
「…………、真奈ちゃん」
英士の視線が、スッと移る。
「佐倉君、私と慶は幼馴染みなんだから、一緒に遊ぶ事ぐらい普通にあるよ?」
僕も英士の視線を追うと、真奈が僕を掴んでいた英士の手に自分の手を重ねて、静かに訴えていた。
「それより…、佐倉君。」
「…ん?」
重ねていた手をそっと離しながら、真奈がいつになくどぎまぎした表情で視線を泳がせている。
なんだ?
何か、照れてる?
様子を窺っていると、やがて決意した様に真っ直ぐに英士を見た。
「佐倉君って……私の事好きなの?」
「「は!?」」
わ。しまった。
うっかり僕まで声を上げてしまった。
何を云い出すのかと思えば…!!
照れ隠しなのか俯いてしまった真奈に冷めた視線を送っていると、不意に胸倉にあった手が離された。
「…英士?」
見ると、英士は耳まで真っ赤になって硬直していた。
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