hanker;036

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  膝の上でギュッと拳を握り締める僕とは対照的に、安住先生が困った様に笑う。 「……僕はまだ子供だし、安住先生みたいな包容力も守る力も持ってないけど」 「うん?」 視界の隅で、煙草を吸いながら相槌を打つ先生が映っていた。 中々的を射ない…もどかしい言葉さえ、こうやって聞こうとしてくれる所は、やっぱり先生だなぁ…なんて思う。 だけど今は 教師と生徒じゃなくて、 男と男の話をしに来てるんだ。 そう、決意を新たに顔を上げて、キッパリと安住先生に断言した。 「それでも、三輪先生への気持ちなら僕は誰にも負けていないと思っています。」 「………。」 緊張の所為なのか、手元の拳が震え始める。 「三輪先生は、誰にも渡しません。」 「…………。」 眉間に皺を寄せて真っ直ぐに見据える僕に、見ているだけで凍りつきそうな位の相当な鋭い視線が注がれた。 長い、長い沈黙が流れる。 反応を待つ僕を余所に、安住先生は一言も話そうとしない。 遠く流れゆく雲をぼんやり眺め、足を組み、煙草の火を消す…。 あれ? もしかして僕、シカトされてます? 沈黙が続けば続く程、不安で一杯になってしまう。 何なんだ、この緊張感は。 「……………吉成。」 「えっ?はい。」 急に声を掛けられて、慌てて先生に向き直る。 安住先生は真っ直ぐ前を向いた侭、目を瞑り険しい表情で、大袈裟な位に重い溜息を吐いて呟いた。 「サムい。」 「………。……ぇ?」 さっ、寒い? それは真冬の空の下だからではなくて?  
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