hanker;037

2/6
前へ
/248ページ
次へ
   * * * ―ザ……ッ 「三輪先生なら校舎裏に居るよ」 去り際に云われた通り、校舎裏へと走る。 安住先生の言葉が、何度も何度も頭の中を巡っていた。 「…ハァー、お前等そっくり。」 「………え?」 「否、実は先刻までここに三輪先生居たんだけど。」 無造作に足を組み替えて、空を仰ぎながらベンチの背に凭れ掛かる。 その動きを目で追いながら、僕は只、黙って耳を傾けた。 「キッパリ断言されちゃってさ~。『私は吉成君と突っ走るって決めたんです!』だって。」 「………。」 「…お前、この意味判る?」 「………。」 そう云って真っ直ぐな目で僕を見た先生に、僕は迷わず頷いた。    判る。 誰よりも、何よりも 僕が一番、判る。 ―ザ……ッ… 「明里!!」 「ッ!?」 校舎裏に着くなり三輪先生の姿が目に飛び込んで来て、思わず叫んでしまった。 一瞬ビクッと身体を強ばらせた先生が、振り返って更に驚いた表情をする。 「吉成君!?何でここに…」 聞き終わらない侭、その腕を引き寄せて抱き締めた。 ―グイッ 「…明里………。」 「………。」 寒空の下で冷え切った掌が、僕の背中をそっと優しく包み込んでくれる。  
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加