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* * *
―ザ……ッ
「三輪先生なら校舎裏に居るよ」
去り際に云われた通り、校舎裏へと走る。
安住先生の言葉が、何度も何度も頭の中を巡っていた。
「…ハァー、お前等そっくり。」
「………え?」
「否、実は先刻までここに三輪先生居たんだけど。」
無造作に足を組み替えて、空を仰ぎながらベンチの背に凭れ掛かる。
その動きを目で追いながら、僕は只、黙って耳を傾けた。
「キッパリ断言されちゃってさ~。『私は吉成君と突っ走るって決めたんです!』だって。」
「………。」
「…お前、この意味判る?」
「………。」
そう云って真っ直ぐな目で僕を見た先生に、僕は迷わず頷いた。
判る。
誰よりも、何よりも
僕が一番、判る。
―ザ……ッ…
「明里!!」
「ッ!?」
校舎裏に着くなり三輪先生の姿が目に飛び込んで来て、思わず叫んでしまった。
一瞬ビクッと身体を強ばらせた先生が、振り返って更に驚いた表情をする。
「吉成君!?何でここに…」
聞き終わらない侭、その腕を引き寄せて抱き締めた。
―グイッ
「…明里………。」
「………。」
寒空の下で冷え切った掌が、僕の背中をそっと優しく包み込んでくれる。
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