hanker;038

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  「慶、こっち。」 「うん?」 いつの間にか離れて僕の隣に立っていた明里が、不意に僕の首に手を伸ばしてくる。 「キスしたい。」 「ッ……!?」 返事する間も無く、ぐいっと顔を引き寄せられて、キスされた。 「…ー――~~ッ!??」 不意打ちにも程がある。 動揺を隠す余裕も無い。 「ふふふ。顔、真っ赤だよ?」 「…ここ、思いっ切り通学路なんだけど」 口元を手で覆いながら俯きがちに視線を落とすと、引き寄せられていた手が更に向き合う距離を近付けた。 息が掛かりそうな位の、至近距離。 「誰も居ないし。バレない為の私服なんじゃないの?」 「え。」 呆気に取られる僕に、明里が悪戯っぽく笑う。 そうだ。そう云えば僕、私服で学校に来たんだった。 一応目立たない様にコート着てたんだけど。 気付いてたんだな。 「…………そう、かもね」 何となく視線を逸らしたのも束の間で、口元を覆っていた手が外されて、再びキスされた。 先刻より少しだけ、熱を帯びたキス。 どうしよ。 これ以上は、離れられなくなりそう。 現に離された唇が、何だか物足りない。 「…まだ。」 まだ。全然足りない。 「えっ?」 明里の腰に手を回して身体を引き寄せる。 自分でも止められない程の、キスの雨が降った。 …なんだこれ。 幸せオーラ出過ぎかも。  
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