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私は一人っ子だけど。
それを寂しいと感じた事は
一度も、無い。
* * *
―カランカランカラ…ン
境内をそぞろ歩く人の列の遙か先から、時折鈴の音が鳴り響く。
今日は、一月三日。
新しい年を迎えて、もう三日が過ぎた。
「真奈、列、こっちだよ」
「あ。ごめんごめん」
慶に手招きされて、少し進んだ列に慌てて戻った。
今年の初詣も例年通り、隼人と慶とこうして三人で参拝に来ている。
私の家は毎年お盆とお正月に、父の田舎で親戚が集まるんだけど。
お正月はいつも私だけ、三日の朝、先に新幹線で帰る事にしている。
なんで?って?
…ふふ。
聞くまでも無い。でしょ?
「今年もどうせあっと云う間に終わるんだろうなぁ~」
「隼人?まだ今年始まったばっかりだよ?」
慶を挟んだ向こう側から、隼人の深い溜息が聞こえて来る。
珍しく神妙な面持ちに、慶と顔を見合わせて苦笑してしまった。
私達の笑いに照れ臭くなったのか、隼人が慶の頭をコツンと小突く。
「っつうかさ、慶はクソ寒いのに何でソフトクリームなんて食ってんの?」
「はぁ!?隼人が食べたいって云ったから買ったんでしょ!?」
「そうだっけ?」
理不尽な問い掛けに、凄い勢いで隼人の方へ振り向いた慶が、真面目に抗議し始めた。
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