Hank. epilogue

3/7
前へ
/248ページ
次へ
  私は一人っ子だけど。 それを寂しいと感じた事は 一度も、無い。  * * * ―カランカランカラ…ン 境内をそぞろ歩く人の列の遙か先から、時折鈴の音が鳴り響く。 今日は、一月三日。 新しい年を迎えて、もう三日が過ぎた。 「真奈、列、こっちだよ」 「あ。ごめんごめん」 慶に手招きされて、少し進んだ列に慌てて戻った。 今年の初詣も例年通り、隼人と慶とこうして三人で参拝に来ている。 私の家は毎年お盆とお正月に、父の田舎で親戚が集まるんだけど。 お正月はいつも私だけ、三日の朝、先に新幹線で帰る事にしている。 なんで?って? …ふふ。 聞くまでも無い。でしょ? 「今年もどうせあっと云う間に終わるんだろうなぁ~」 「隼人?まだ今年始まったばっかりだよ?」 慶を挟んだ向こう側から、隼人の深い溜息が聞こえて来る。 珍しく神妙な面持ちに、慶と顔を見合わせて苦笑してしまった。 私達の笑いに照れ臭くなったのか、隼人が慶の頭をコツンと小突く。 「っつうかさ、慶はクソ寒いのに何でソフトクリームなんて食ってんの?」 「はぁ!?隼人が食べたいって云ったから買ったんでしょ!?」 「そうだっけ?」 理不尽な問い掛けに、凄い勢いで隼人の方へ振り向いた慶が、真面目に抗議し始めた。  
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加