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毎度の事ながら、見失った瞬間はいつも焦ってしまう。
こんな時、少しだけ寂しさを感じている事は…きっと二人は知らないんだろうな。
「…奈、真奈!」
「えっ?」
―ガシッ
行き交う人の流れに押される私の腕を、慶が後ろから掴む。
「慶……。」
「…どこ行ったかと思った。」
先刻までのほんわかした表情が嘘の様に、真剣な表情で顔を覗き込まれた。
「…………。」
昔からいつだって必ず、私を見つけてくれるのは慶だった。
繋がれた手が、温かい。
そう云えば子供の頃は、慶と手を繋げるのは私の特権だと思ってた。
クラスの女子に羨ましがられて、ちょっとした優越感を覚えたりもした。
ふふ。バカだなぁ、私。
そんなの最初から
私の特権なんかじゃない。
知ってる。知ってた。
…私って、やっぱり欲張り?
三輪ちゃんと幸せになって欲しいって、思ってるのに。
「………。」
慶の手は温かくて、少し切なくなった。
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