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リヒャルトは、ルドルフに息がかかるほど顔を近づけた。
ルドルフの瞳に、怯えの色が走る。
「ご主人は、練習やリハーサルには俺たちを使うくせに、本番だけはお前ばかり採用される。たった一つの取り柄しかないくせにな❗」
身をすくめるルドルフに、リヒャルトは更に怒りをつのらせた。
俺の方が、容姿も肉体も優れている。力強い脚は、彼女を上手くリードできる。
なのに、ご主人はこんなみっともない特徴しかない、冴えないこいつだけを贔屓する。
俺も仲間も、奇跡の夜のために一年間修業し己を鍛え高めているのにーーー
「いいな⁉明日は、俺が彼女と組む。お前なんかよりずっと上手くリードできるところを見せてやる。お前は、部屋の奥で縮こまって、自分の非力さを嘆いてろ‼」
最後に肩をぶつけるようにして、リヒャルトは家の中に戻った。
体格のいいリヒャルトに当てられそうになり、ルドルフはよろめいて膝をついた。
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